顧客管理の目的
顧客管理の目的はなんでしょうか?
顧客管理をして、何を実現したいのでしょうか?
例えば、「固定客を増やして、利益をあげること」。もちろん、それも良いでしょう。
しかし、顧客マネジメントのガンジスは、次のように考えます。
「顧客と交流を深めて、お店と顧客との幸せな関係を築くこと」
これが、小さなお店の顧客管理の目的です。
この目的に向かっていろいろな取り組みをすると、結果として、固定客が増え利益が増えます。
「固定客を増やす」「利益をあげる」というのを目的にしなくても良いのです。それを目的にすると、取り組み方を誤り、失敗することもあります。
文献やホームページで、顧客管理のいろいろな取り組み方が、解説されています。しかし、中には、小さなお店にとって不要な方法も多くあります。自分のお店にその方法が必要かどうかは、「顧客と交流を深めるかどうか」「顧客を尊重しているかどうか」という基準から判断しましょう。
ここまで「顧客管理」という用語を使ってきましたが、実際は「顧客を管理」することはあり得ません。人を管理できるわけがないのと同じです。顧客管理という用語を考えなく利用していると、間違った取り組みをして失敗します。
顧客マネジメントのガンジスは、「顧客管理」という言葉の代わりに「顧客記録活動」という言葉を利用します。
顧客記録活動
顧客記録活動とは、顧客記録(基本情報、取引記録、対応記録)を利用する活動です。
そして、顧客の記録が交流を深めます。
以降のこの記事で、わかりやすくするため、顧客管理という用語を使っているところもありますが、実際は「顧客記録活動」と読み替えつつ読んで下さい。
顧客の記録は次の3つに分類できます。
- 基本情報 名前・住所などの記録
- 取引記録 商品・サービスの取引の記録
- 対応記録 基本情報と取引記録以外 例)会話の内容
顧客名簿を作成し更新する
顧客名簿は基本情報のリストです。
顧客名簿がない場合を、考えてみましょう。
- 顧客に連絡できません。ニュースレターを送りたくても出来ません。
- 顧客の分類も、集計もできません。お得意様・新規客・見込み客・休眠客かどうかも、その数も分かりません。
- 顧客ごとに、取引記録・対応記録をつけられません。
顧客名簿は、顧客記録活動の基礎です。顧客と交流を深めるために、必須です。
顧客との取引を記録する
顧客との取引を記録すると、次のことが達成できます。
- 会話のきっかけにできる
- 手堅いサポートができる
- 商品の耐用年数や消費サイクルに合わせてお知らせできる
- 休眠客が分かってアプローチできる
- 次回の取引の参考にしたり、新しい提案をしたりできる
- トラブルを防ぐ、解決する
- 技術やサービスの向上ができる
- 出来たことを記録し振り返って、自己肯定感を高め、行動につなげる
- 失敗の記録を振り返って、失敗を減らせる
- 分析できる
- 取引の内容を忘れても構わないので、安心できる
顧客との対応・会話を記録する
対応記録とは、顧客の基本情報と取引記録以外での顧客に関する記録です。
顧客との交流を深め、友人のような関係・友人になるのは、主にこの記録によってです。
顧客との対応を記録すると、次のことが達成できます。
- 会話を深める
- みんなで顧客にあった対応ができる
- 後継者もすぐに交流を深められる
営業支援システム、販売管理システム、顧客管理システム
顧客に関わるシステムは、いくつもあります。ここでは、それらシステムについて考えてみましょう。
例えば、
- 営業支援システムでは、案件の進捗管理を行います。
- 販売管理システムでは、売上や請求、在庫の管理を行います。
- 顧客管理システムでは、顧客情報を取り扱います。
しかし、小さなお店にとって、これらのシステムの違いは明確ではありません。
システムを提供する側によっても、説明が異なります。
ある顧客管理システムには、販売管理や営業支援の仕組みが含まれています。ある営業支援システムに顧客管理の仕組みが含まれています。
また、利用する側も、ここからここまでが営業支援、ここからここまでが顧客管理システムの領分、というのを分けているわけではありません。
3つはシステムが分かれている場合もあるし、1つのシステムで完結している場合もあります。
小さなお店に必要なのは「交流を深めるために顧客の事柄を記録できる」システムです。そのシステムは、住所氏名などの顧客の基本情報に、取引記録・対応記録を紐付けることで、達成できます。
CRM(Customer Relationship Management)
CRMとはなんでしょうか?
- Customerは、顧客
- Relationshipは、関係
- Managementは、管理
CRMは、顧客関係管理になります。顧客との関係性(購入履歴・商談履歴などの顧客との接点)を記録に残して把握しよう、ということです。顧客管理と同じ意味で使われています。
ただし、顧客管理は、顧客を管理するという意になり、できるはずが無いことです。しかし、顧客関係を記録に残して管理する、というのは、実現できます。そのため、用語としては「顧客関係管理」が、より適切と言えるでしょう。
顧客を想定して理解する
ペルソナ(Persona)
Persona 人格
ペルソナとは、年齢や趣味など具体的に細かい情報を設定した顧客像です。ペルソナを利用して、商品開発や広告を行います。
私の意見では、現実の顧客に基づいてペルソナを想定するなら、いい方法です。顧客のニーズや希望に添ったお店や製品になります。
しかし、小さなお店がそこまでする必要があるかどうかは、経営者の判断です。
参照
ペルソナ (ユーザーエクスペリエンス) Wikipediaに詳しく解説されています。また、ペルソナの有効性に批判もあります。
カスタマージャーニー(Customer Journey)
顧客の旅
ペルソナ(顧客像)を設定し、商品との出会いから購入に至る流れを想定するものです。
今は、販売チャネルが多様化しました。そのため、顧客が購入に至る流れも複雑化しています。それを、カスタマージャーニーで把握します。
カスタマージャーニーを、図にしたものが、カスタマージャーニーマップです。
しかし、これもペルソナと同様、小さなお店がそこまでする必要があるかどうかは、経営者の判断です。
参照
顧客を分類
リード(Lead)
Leadは、動詞で「導く」、名詞で「先頭」の意味です。マーケティング用語としては、「見込み客」になります。「先頭」がどうして「見込み客」になるのかは、色々と調べたのですがはっきりしませんでした。推定ですが、顧客を分類すると、その最初の段階が、見込み客だからだと思います。
リード(見込み客)への取り組みには、次があります。
- リードジェネレーション(Lead Generation) 見込み客を集客・獲得
- リードナーチャリング(Lead Nurturing) 見込み客を育成
- リードクオリフィケーション(Lead Qualification) 見込み客を選別。優先順位をつける。
目的にしないで良い顧客管理の考え方
顧客管理の解説には、リードナーチャリングとか、LTV(顧客生涯価値)を向上させるとか、横文字で書かれた考え方や方法がいくつもあります。しかし、小さなお店は、それらを目的に取り組む必要はありません。顧客と交流を深めることで、それらの方法と同じ結果になります。ですから、交流を深める取り組みがきちんとできてから、そうした事柄を考えれば良いのです。
リードナーチャリング(Lead Nurturing)
- Leadとは、見込み客
- Nurturingとは、育てること
従って、リードナーチャリングとは、見込み客を育てることです。
見込み客を育てるのによく解説されているのは、商品や自社についての情報を、いろいろな手段で見込み客に伝える方法です。手段とは、ブログやメルマガやSNSやイベント・セミナーなどです。
しかし、これら手段は、一方的に「私たちを知って!知って!」と大声を張り上げているようなものです。もちろん、自分たちを知ってもらうのは必要ですが、顧客を尊重しているわけではありません。自分を知ってもらうのと同様に、顧客を知る必要があります。そうした顧客を知る具体的な取り組みがなければ、このリードナーチャリングの効果は小さいでしょう。
LTV(Life Time Value)
LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客が生涯に渡って与えてくれる価値(純利益)です。
顧客が固定客になると、LTVは増加します。もちろん、それで良いのですが、LTVを向上させるのを目的にする必要はありません。それを目的にすると、顧客を尊重しない手段になるかもしれないからです。ひどいのになると、顧客が分からないからといって、設備の不要な交換を勧めたり、更には、故障していないのに故障を偽装して修理費をとったり(大手子会社の犯罪で実例あり)する例もあります。
また、顧客が与えてくれる価値は、純利益に限りません。顧客が、口コミで他の顧客を紹介してくれる価値ははかりしれないものです。
この記事のまとめ
顧客記録活動(顧客管理)の目的は、「顧客と交流を深めて、お店と顧客との幸せな関係を築くこと」。
この目的を達成するために取り組むと、結果として、固定客が増え利益が増えます。
そして、交流を深めるために、顧客の記録が必要なのです。
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