口コミは、顧客の主体的な活動です。お店から、口コミを行いやすくする働きかけは行いますが、顧客の自主性に任される面が大きいです。
紹介依頼は、お店から顧客への直接の働きかけです。ピンポイントで個々の見込み客を増やし、また、口コミより紹介者の役割が大きくなります。
紹介依頼の方法は、何冊もの本に書かれているほど様々です。ある本には、この紹介依頼の方法がいいよ、と書かれていても、別の本には、その方法ではいけないよ、と書かれていて、一体何が正解なのか混乱する場合もあります。「紹介営業」と銘打って、顧客を動かすためのトークスクリプトなどテクニックに重きを置く解説もあります。例えば、紹介依頼をしたその場で顧客に電話をかけてもらうという方法があるのですが、私はやり過ぎだと考えます。もとから出発点が違うのです。「売り込むため」のテクニックは顧客に見透かされます。小さなお店がそうしたことをする必要は無いですし、している時間もありません。そうしたことを行うと、せっかくの交流を深めた関係が台無しになっていきます。出発点は「顧客を尊重する」です。
当たり前ですが、自分が納得できる紹介依頼の方法を実行すれば良いのです。「顧客を尊重する」という考えに基づいて紹介を依頼するのなら、間違いは無いでしょう。
紹介してほしいと伝えること
「紹介して下さい」と伝えないと、顧客は紹介しようとは、なりません。
NPOに寄付が集まらないのは、寄付をお願いします、と言われていないから、というのが最大の理由であるのと同じです。
顧客に直接依頼する方法、紹介カードを渡す方法もあります。いずれにしろ、紹介を依頼することです。
紹介してほしい対象を具体的に伝える
漠然と、誰でもいいから紹介して下さい、というのは誰も紹介されないので、具体的にこうした人がいませんか?と尋ねるのが良いです。
- PCのインストラクターなら、「パソコンで困っている人はいませんか?」とか、さらに絞り込んで「ExcelやWordの操作で困っているお友達はいませんか?」になるでしょう。
- ある美容室では「○○さんと同じ髪の悩みを持っている人はいますか?」と聞くと「××さんかな」と答えてくれるので、後で「××さんに、この紹介カードを渡して下さいね。○○さんと同じ髪の悩みなら、可愛く・綺麗にします!」と、特定の個人に紹介カードを渡すように促しています。
自己紹介ツール
自己紹介ツールを準備しておき、紹介する人が、言葉で紹介しやすいようにすると良いです。
紹介者が、要領を得ずに紹介するのではなく、要点を押さえて紹介してくれるようにするには、その要点を分かりやすく伝えておくと良いわけです。例えば、PCのインストラクターの人を紹介するとして、「パソコンに強い人だよ」という紹介よりは「ExcelとWordがプロ級だよ」という紹介の方が、紹介する方も分かりやすく説明できるし、される方もよく理解できるわけです。
自己紹介ツールは、様々あります。自分にあった方法を採用すれば良いでしょう。
- 名刺
自己紹介を要領よくまとめて記載する。そうした名刺を専門的に作成する会社もあります。 - 自己紹介チラシ・冊子
名刺は小さすぎて伝えきれず迫力も無いと考えるなら、チラシや冊子の形で、自己紹介を行う方法です。会社案内のパンフレットがありますが、それを個人ごとの案内にしたものですね。自分で作成しても良いですが、自分のポートレイトをプロの写真家にとってもらい、キャッチコピーをつけて、デザイナーに作成してもらう場合もあります。そうしたチラシ・冊子を作成する会社もあります。 - ニュースレター
参照:ニュースレターを発行している - 自分のブログ・SNS
参照:ブログを書いている、SNSで繋がっている
ただし、こうした自己紹介ツールを利用して、「自分を売り込む」ことが営業と考える人もいますが、私はそれを明確に否定します。その考えは、自分が中心であって、顧客を尊重する視点が抜け落ちるからです。自分を知ってもらう・顧客を理解する、その両面があっての交流です。
紹介をする人
顧客だけが紹介をするわけではありません。
- 会社の中の繋がりから紹介してもらう
社内の他の営業に同行し、別の商品・サービスを提案するため、顧客を紹介してもらう。
社内の社長・役員に紹介してもらう。 - 同業者に紹介してもらう
高い専門性が必要だったり、商品・サービスが自社では提供できない場合など、自分のところでは対応できない顧客を紹介してくれます。例えば、高度に専門的な治療を行い全国から患者が集まる病院では、医療関係者にそうした患者さんを紹介してください、と伝えています。
紹介先へのアプローチ
紹介された場合の、アポイントの取り方など、様々な方法が解説されています。
- 最初のアプローチとして、小冊子を送ると言って顧客から紹介してもらい、送付文章に「○○様から紹介して頂きました」とする方法もあります。
- 紹介された人に、化粧品の試供品を渡して、次は感想を聞きに来ますね、と言って、次回、感想だけを聞きに行く方法です。その場では売り込みはしません。なぜなら、感想を聞きに来る、と言ったのですから、感想だけを聞くのが顧客との約束だから、という考えに基づきます。(『頑張らなくとも一日3200万円売れました。』 p.43)
依頼するタイミング
- 顧客がその商品・サービスにもっとも関心が高まっている時期
契約時、納品時、○ヶ月以内に依頼するという方法があります。 - 商品・サービスを説明する(本題に入る)前
「いい話だな、良い商品だと思ったら、お知り合いをご紹介下さい」と、前もって伝える方法もあります(『誰も教えてくれない「紹介営業」の教科書』 p.113)
紹介者の役割
住宅メーカーで、家が建つまでの様々なトラブルを、紹介者を巻き込んで解決することすらあります。紹介をして頂いた顧客からのクレームやトラブルを紹介者にも伝え、紹介者が顧客の相談にのってもらうという、一般的に考えられる紹介者の範囲を超えた役割を担ってもらうやり方です。
紹介者への特典・紹介料
紹介して頂けたら、○○カード2000円分、とか紹介料を明示するところもあります。
特典や紹介料によって「人間関係に点数をつけるべきではない」という考えの人もいます。ただ、紹介してもらった後に、丁寧に御礼を伝え、その際、御礼の品を贈るのは良いのです(友人にもそうしますよね)。
御礼の品や紹介料を個別に決める場合
この場合、お礼をどうするかは、よく考えないといけません。紹介してくれた顧客が、御礼を期待している場合があります(無い場合もあります)。ギフトにするか、現金・商品券にするか。その金額をどうするか。なかなか難しいですよね。
御礼を金銭に換算して贈るのは、顧客の貢献度を金額に置き換えたものになります。顧客の期待値よりその金額が低いというのは、貢献度が低いと言っているのと同じですから、不満の原因になります。
また、こうした精神的な面での不満と同時に、実利の面での不満も発生します。特に高価な案件・物件のお客の紹介をうけ成約した場合、けちくさい御礼は逆効果です。例えば、ある不動産会社へ取引先がお客を紹介して成約したわけですが、その御礼が取引金額に合わないみすぼらしさでした。その取引先が、もう一度紹介してくれることはありません。
御礼は、紹介してくれた人が固辞されない限り、きちんとする。そのためには、人に相談して、客観的に御礼の内容を決めるのが良いと考えます。
何を理由に紹介してもらうか
顧客が紹介しよう、となるのは、どういった場合でしょうか?
- 紹介することで、自分にメリットがあると考えた場合。
- 紹介して、担当・その会社を応援しようと考えた場合。
- 商品・サービスに満足し、他の人にも勧めたら、その人が喜ぶだろうと考えた場合。
- その商品・サービス・団体の理念に共感し、それを広めることが社会のためになると考えた場合。
など、様々ですし、それらが複合している場合も多いでしょう。
例えば、議員候補を支援するのは、思惑や損得がある人、候補をよく知っているので応援したいという人、その人の主張に共感しそれが社会を良くするからと考える人、など様々です。
また、1人の紹介者が紹介する理由も複合的です。1から4の全てが理由だったりします。
となれば、それぞれの理由が生まれるように、お店側が行動する必要があるわけです。
- 1について。紹介者へのメリット、さらには、紹介される人のメリットを伝えます。ただし、紹介者へのメリットを、御礼の品や紹介料などに置き換えるのは良くない場合があることを考慮する必要があります。
- 2について。顧客とお店との交流を深めることで、顧客は、お店に親しみがわき、自然と応援しようという気持ちになります。
- 3について。「他の人に勧めたら喜んでもらえる」ということを理解してもらうと良いです。例えば「この問題で困っている人は、この商品を利用すると解決するので喜んでいます」と伝えるわけです。
- 4について。紹介する理由の中でも、とりわけ大勢の人が熱心に紹介してくれるようになるのは、理念に共感する場合が多いです。この商品・サービスを広めることが、社会のためになると考えると、自発的に紹介してくれるようになります(口コミと同様です)。
催しの紹介依頼をする
この商品では、紹介を依頼するのは馴染まないよというお店も、催しを行うと紹介を依頼できます。例えば、カフェやパン屋さんなら、定期的に催しを行い、その催しに参加した人に「次の催しに、こうしたことに興味のあるお友達を連れてきて下さいね」と紹介依頼をすることができます。商品・サービスの紹介ではないですから、催しは、紹介依頼をしやすいですし、顧客も友人知人に気軽に紹介しやすいですね。
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