生産者・サービス提供者の場合
農家が直接通信販売を行うためには、農作物自体の出来の良さも必要ですが、それだけでは足りません。特に、収穫前に予約を取るには、農家が信頼されていなければ注文はとれません。農園の日々や歴史、天候に左右される苦労、収穫の喜びなど、そうした想いを顧客に伝え、顧客に共有・共感してもらう。それによって、顧客は生産する農家のことを知り、信頼し、この商品は本当に美味しいかな、失敗しないかな、という不安が解消されます。
ある石材店では、お墓は「家族をつなぐ」という店主の想いを伝えています。お墓に対する真摯な姿勢を伝える。それを好ましく思う人はいても、悪く思う人はいないでしょう。
ある珈琲豆焙煎店の通販ホームページでは、とんでもなく長い販売用ページ(いわゆるランディングページ)で、どれだけ豆の焙煎に情熱をかけ、研究を行っているかを書いています。
ある酪農家のお店では、店名を絵本から頂いたことを掲示し、その絵本も置いています。
ある歯科医院では、虫歯を予防するためには歯のメンテナンスが大切なことを強く主張し、それを医院の方針にしています。
小売店の場合
自分で生産していたりサービスを直接提供している場合は、その想いを伝える熱量は大きくしやすいですが、小売店も、その商品を提案する理由や使ってみた感想、更には、なぜこのお店を開いているのか、といった事を言えば良いのです。ただ商品を並べるだけでは伝わることのない、お店としての想いを伝えられます。
様々なお店で、商品を実際に自分で利用してみた感想を、ポップにしたりチラシやブログに書いています。商品を並べただけ、価格と商品名(写真)だけの広告よりは、はるかに、商品を手に取ってもらえますし、チラシも読まれます。また、ある米穀店では「農家の心とお客様の心を強く結びたい」という想いを「お店のこころ」として、手書きの文章で掲示しています。
チラシでは、まず1つの商品を突き詰めて伝える
いつも思うのですが、量販店のチラシは、なぜ価格と商品写真だけなのでしょうか。価格しか訴えるものが無いのでしょうか?これは、小さなお店がすべきことではありません。掲載する商品の数を減らし、1つの商品・サービスに焦点をあてて、その説明・使ってみた感想・お客様の声によって紙面を作ります。こうすると、捨てられるチラシから読まれるチラシになります。その商品をよく知って思い入れの深い人、つまり、その商品に惚れている人がその想いを語ることによって、他の人は心を動かされます。惚れている人が、生産者だったり、顧客だったり、店主だったりそれは様々ですが、その想いは本物です。本物ですから説得力があります。
そして、1つの商品に絞って訴求することが、他の商品へも波及します。例えるなら、たくさんの物に満遍なく光を当てはしたけれど、どれも輪郭がはっきりせず、1つも注目を集められないのが、量販店のチラシです。それとは異なり、まずは1つにだけ光を集め、多くの人がそれに注目することで、その周りの物にも視線が集まるのが、1つの商品を突き詰めて伝えるチラシです。
人の強い想いは、他の人の心を揺さぶります。しかし、そうした想いは、伝えなければ分かりません。商品・サービスにまつわる想いを言葉にして表現し、きちんと伝えることが、お店と顧客との幸せな関係を深めることに繋がります。
あなたは、商品・サービスにまつわる想いを伝えていますか?