コミュニティの定義
『ファンをはぐくみ事業を成長させる 「コミュニティ」づくりの教科書』では、
- 人の集まりである
- 参加者が能動的に参加する
- 参加者が対等にコミュニケーションできる
と定義しています。つまり、参加者がお客さんになってしまうだけの場はコミュニティでは無いということですね。ただ、全員が能動的に活動したいわけではないだろうし、親睦を深めるだけで充分と思う人もいるので、能動的に参加するという定義は私ははずします。
また、自然発生するものをコミュニティとし、人為的につくるものではないと定義する場合もあります。コミュニティの定義は、それぞれで決めれば良いと思います。
雑記帳
雑記帳をお店においておくと、来店客同士の気軽なコミュニケーションのツールになります。昔からあり、気軽に始めることができる方法です。お店の負担もありません。来店客が書くのに、とても敷居が低いのが良いですね。コミュニティとまでは言えませんが、お店に集う人のコミュニケーションの形の1つです。
店主が紹介
店主が、顧客同士を紹介しているところがあります。それによって、お店に行けば、知り合いがいる、という状態になっていきます。
コミュニティを形成することを目的にしたコミュニティカフェもたくさんあります。
自然発生
カフェでは、客層によっては、ビジネス情報の交換が行われたりするコミュニティの場として機能しています。あるスポーツクラブの常連客は、別途集まって親睦会を開いています。
自然発生を促すには、例えば円形の大テーブルにすると、来店客同士が話しやすい状態になったりします。
江戸時代の髪結床では社交場でした。順番を待つあいだ、客は囲碁や将棋、読書、おしゃべりなどを楽しんでいました。(『江戸のお店屋さん その参』 p.27)
直接運営するコミュニティ
自立的なコミュニティではなく、お店や団体がコミュニティを直接運営しているところはよくあります。例えば、ハーレー・オーナーズクラブ。ツーリングのイベントなどで、ハーレーファンが、親睦を深めるコミュニティです。
直接運営するコミュニティなら、小さなお店単体であっても運営している例は多いです。
- スポーツ自転車店で、ツーリングをする倶楽部。
- オートバイ店の、レーシングチーム。
- ボーリング場の公認倶楽部。
- ○○教室の保護者会。
お店の商品・サービスと関係なく、顧客が親睦を深める会を運営する例もあります。
- ある鍼灸院では、定期的に食事会を開いています。
コミュニティ・マーケティング
「ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング 」の書に書かれている方法です。
実践に裏付けられた成功した方法なので、いろいろな分野に応用できます。新しい知見も得られます。
私は、小さなお店で行うにはどうするのがいいだろう、と考えながら読み進めてみました。
この方法は、本書でも指摘しているように「クチコミマーケティング」(同書・p.78)と本質は同じなのです。顧客が他の人に広めてくれる・顧客の要望を知る。そうしたことを、コミュニティによって達成できます。
自立したコミュニティ
おそらく、小さなお店で難しいことは、これを自立的なコミュニティ(前書で言えば、自走するコミュニティ)にすることでしょう。お店がコミュニティを運営するのではなく、お店は手伝いにとどめ、熱心なファンがコミュニティを維持・拡大する。規模の大小を問わずメーカーの製品なら、熱心なファンが、コミュニティを自立して運営している例はありますが、小さなお店単体(例えば、パン屋さん)が、熱心な岩盤固定客に、自立したコミュニティを運営してもらおうとするのは、やはり難しい感があります。
では、小さなお店には、自立したコミュニティは出来ないのでしょうか?
私は、こう考えます。1つのお店で難しいのなら、コミュニティの対象を、そのお店の関わりの深いファンがいるものにし、多くお店でバックアップすれば良いのです。例えば、1店舗のパン店では自立したコミュニティはできなくても、10店舗・20店舗のパン店が、パン好きの集まるコミュニティをバックアップすれば、コミュニティは活発に活動できるようになります。
- 観光地なら、観光地の店舗が多く集まり、その観光地のファンのコミュニティをバックアップする。
- ○○県のパン屋さんが集まって、パン好きのコミュニティをバックアップする。
前書に習えば、店舗のなかからコミュニティーを手助けするコミュニティーマネージャーを1人(あるいは少人数)おき、コミュニティとお店の集まりとの間の折衝は、マネージャーに集約してしまうと良いです。そうすれば、例えば、コミュニティ側から「パンの食べ比べのイベントをしたいんですが、パン屋さんの協力をお願いできますか?」とコミュニティマネージャーに言えば、マネージャーが、パン屋さんに連絡をとり協力を取り付ける。そうすれば、コミュニティ側が個別のパン店と一々交渉する必要がなくなり、物事がシンプルになります。
また、小さなお店が単体で直接運営するコミュニティを維持できないのなら、先の例と同様に、お店が集まって(業界団体などが)コミュニティを直接運営するのも良いはずです。私が住んでいる自治体は、競技カルタが盛んな地域で、競技カルタの漫画・アニメの熱心なファンをもてなす活動を行っています。観光協会が、地域の商店などのとりまとめ役となっているわけです。
自立したコミュニティを起ち上げる
直接運営するコミュニティなら、物事を決めてどんどんすすめていけば良いですが、外部の自立したコミュニティを起ち上げるには、リーダーとなる人を探す必要があります。
- 商品・サービスに、熱心なファンがいるなら、その人に声をかけてみる。いろいろなサポートをするので、こんなことをしてみませんか?と、連絡をとってみるといいでしょう。
- ホームページなどで、商品・サービス・お店を利用して何か行いたい人を、募集する。受け身の方法ですが、募集していますよ、と少なくとも告知しておく必要があるでしょう。
ほとんどの場合、なんらかの働きかけがなければ、自立したコミュニティは起ち上がりません。何もしなければ、発生しないのです。
親睦を深める
私は、コミュニティで行うことが親睦を深める交流だけでも充分良いと考えています。食事会・旅行・パーティなどを開催し、コミュニティの参加者同士でお互いのことを知り合うことができればそれでいいと思うわけです。それは充分価値があることです。
イベント
イベントは、ビジネスコミュニティ(主に企業が主体)の要素と考える場合もあります(『ファンをはぐくみ事業を成長させる 「コミュニティ」づくりの教科書』p.35)。同様に、小さなお店や、NPOなどで、イベントを開くのはコミュニティを活発化させますから、できる範囲で行うのはとても良いのです。ただ、参加する人が増えれば増える程、準備も開催もその後始末も、大変な労力のかかる事柄です。まず、日頃の活動そのものがコミュニティを活発化させる仕組みを持つ、その上で催しを開く余力があるならすれば良いのであって、大規模なイベントで疲弊して、通常の活動が疎かになるのは本末転倒です。
お寺のコミュニティ
北陸は、浄土真宗が深く根付いたところで、お寺の他に、地域に道場がありコミュニティの場となっていました。徐々に道場は失われ、今も実際にコミュニティとなっているところはごく少数になっています。さまざまな行事に参加する人も減り(世代交代で引き継がれない)で、多くのお寺のコミュニティは小さくなる一方です。コミュニティを再構築するために、多くのお寺が様々な方法で取り組んでいます。あるお寺では、大学の研究室が行うフィールドワークの学生を毎年受け入れ、皆とSNSで交流を続けています。
コミュニティを起ち上げる・維持する方法は、何冊もの本に書かれています。小さなお店も、自分にあった方法で、コミュニティを起ち上げ・維持するのはできることです。そうすることで、お店と顧客との交流を、コミュニティを通して大勢の人へ広げていくことができるでしょう。
あなたなら、どのようなコミュニティを起ち上げますか?