概要
享年は、数え年による表記だったものが、現在は満年齢による表記も利用されるようになっています。それを、用例をもとに検証してみます。
享年の意味の解釈は様々あります。また、享年と行年とはその意が異なるとする解釈もあります。ここでは、それら解釈の考察は行いません。
新明解国語辞典 第七版(三省堂)による解説
- 享年
- 〔この世で享(う)けた年の意〕死んだ時の年齢。〔「行年」ぎょうねんとも言う「享年七十九(歳)」〕
- 受ける
- 与えられる。「強烈な印象を受ける〔=持つ〕/「生(せい)をうける」。「生をうける」は享けるとも書く。
- 数え年(かぞえどし)
- その人の生まれた年の12月までを1歳とし、年が改まるたびに1歳を加えてかぞえる年齢。
- 満年齢(まんねんれい)
- 満でかぞえた年齢。誕生日が来るたびに1歳を加える。
辞典によると、生をうける(与えられる)は、生を受ける(享ける)、と書きます。享受という言葉があるので、確かに同義なんだと腑に落ちます。
また、辞典の解説では、死んだ時の年齢の「年齢」は、数え年か満年齢を言うようです。
今では、年齢と言えば満年齢を言いますが、それが広まったのは第2次世界大戦の敗戦後の事です。それまでは、数えが利用されていました。*1
享年が数え年の用例
以下3つの、明治39年・大正12年・昭和8年の新聞の訃報記事では、享年は数え年です。享年は数え年の表記が一般的だったと想定されます。ただし、数が少ないので、結論づけられません。今後、さらにデータを採取してゆく予定です。
東京朝日新聞 1906.7.24(明治39年)
兒玉参謀總長逝く
「享年實に五十五歳。」
55は数え。満54歳没。
満州日日新聞 1923.9.16(大正12)
逝ける熱血漢張勲 数奇なりし七十年の生涯
「天津英租界の自邸に於て永眠した享年七十歳」
70は数え。満68歳没。
ただし、享年○「歳」の、歳をつける表記をしている。
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫・満州日日新聞 人物伝記(2-027)
大阪朝日新聞 1933.10.17(昭和8)
新渡戸稲造博士
「享年七十二」
72は数え。満71歳没。
神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 大阪朝日新聞 人物伝記(5-040)
享年が満年齢の用例
今は、メディアの記事では、享年を満年齢で表記するようになっているようです。
asahi.com 2011年4月20日(平成23)
「享年28、画業10年の疾走回顧 没後100年青木繁展」
28は満年齢。30が数え。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201104200438.html
週刊朝日 2015年3月27日号(平成27)
「松谷みよ子さんが2月28日、老衰で亡くなった。享年89。」
89は満年齢。90が数え。
https://dot.asahi.com/wa/2015032000048.html