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享年の用例2018.4.8

概要

享年は、数え年による表記だったものが、現在は満年齢による表記も利用されるようになっています。それを、用例をもとに検証してみます。
享年の意味の解釈は様々あります。また、享年と行年とはその意が異なるとする解釈もあります。ここでは、それら解釈の考察は行いません。

新明解国語辞典 第七版(三省堂)による解説

享年
〔この世で享(う)けた年の意〕死んだ時の年齢。〔「行年」ぎょうねんとも言う「享年七十九(歳)」〕
受ける
与えられる。「強烈な印象を受ける〔=持つ〕/「生(せい)をうける」。「生をうける」は享けるとも書く。
数え年(かぞえどし)
その人の生まれた年の12月までを1歳とし、年が改まるたびに1歳を加えてかぞえる年齢。
満年齢(まんねんれい)
満でかぞえた年齢。誕生日が来るたびに1歳を加える。

辞典によると、生をうける(与えられる)は、生を受ける(享ける)、と書きます。享受という言葉があるので、確かに同義なんだと腑に落ちます。
また、辞典の解説では、死んだ時の年齢の「年齢」は、数え年か満年齢を言うようです。
今では、年齢と言えば満年齢を言いますが、それが広まったのは第2次世界大戦の敗戦後の事です。それまでは、数えが利用されていました。*1

 

*1 数え年 - Wikipedia

享年が数え年の用例

以下3つの、明治39年・大正12年・昭和8年の新聞の訃報記事では、享年は数え年です。享年は数え年の表記が一般的だったと想定されます。ただし、数が少ないので、結論づけられません。今後、さらにデータを採取してゆく予定です。

東京朝日新聞 1906.7.24(明治39年)

兒玉参謀總長逝く
享年實に五十五歳。」

55は数え。満54歳没。

 

新聞集成明治編年史. 第十三卷 p121

満州日日新聞 1923.9.16(大正12)

逝ける熱血漢張勲 数奇なりし七十年の生涯
「天津英租界の自邸に於て永眠した享年七十歳

70は数え。満68歳没。
ただし、享年○「歳」の、歳をつける表記をしている。

 

神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫・満州日日新聞 人物伝記(2-027)

大阪朝日新聞 1933.10.17(昭和8)

新渡戸稲造博士
享年七十二

72は数え。満71歳没。


神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫 大阪朝日新聞 人物伝記(5-040)

享年が満年齢の用例

今は、メディアの記事では、享年を満年齢で表記するようになっているようです。

asahi.com 2011年4月20日(平成23)

享年28、画業10年の疾走回顧 没後100年青木繁展」
28は満年齢。30が数え。


http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201104200438.html

週刊朝日 2015年3月27日号(平成27)

「松谷みよ子さんが2月28日、老衰で亡くなった。享年89。」
89は満年齢。90が数え。

 

https://dot.asahi.com/wa/2015032000048.html

参考